「SEOはもう終わり、これからはGEOだ」という声が聞こえる中、美容業界メディアのBeautyMatterが、マーケティング会社Stella Risingと共同で開いたウェビナーの内容を記事にまとめました。AIの回答に美容ブランドがどう登場しているかを大規模に調べたデータをもとに、「SEOを捨てる必要はない。ただし、AIに選ばれる条件は通常の検索と少し違う」という、落ち着いた結論を示しています。業界は美容ですが、学べる点は多くの分野に共通します。
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調査の規模:約9,600のプロンプト、約40万件の引用
発表したのは、Stella Risingで検索とイノベーションを担当するJohn Morabito氏です。調査では、9,589のプロンプト(AIへの質問文)に対する約6万7,000件のAI回答と、そこに含まれる約40万件の引用(回答の根拠として示されたリンク)を分析しています。
ここで言うGEO(Generative Engine Optimization)は、ChatGPTやGoogleのAI OverviewsのようなAIが回答を作るときに、自社の情報が引用・推奨されるように最適化する取り組みのことです。
数字で見る「AIに選ばれるページ」
記事で紹介された主なデータは次のとおりです。
- ブランド名を含むGoogle検索のうち、82%でAI Overviewが表示される
- AI Overviewsで引用されたページの62%は、通常の検索結果の上位に入っていない
- 引用元の内訳は、解説ガイド・ブログ・レビューなどの教育的コンテンツが40%、商品詳細ページが22%、カテゴリ一覧ページが13%
- 編集コンテンツ(記事・解説)が引用に占める割合は、メイク34%、スキンケア28%、フレグランス24%と、カテゴリによって差がある
特に注目したいのは「62%は上位表示ページではない」という点です。順位が高いことと、AIに引用されることは、必ずしも一致しません。上位表示はあくまで土台で、AIは「質問に対して詳しく、根拠を示して答えているページ」を別の基準で拾っていると考えられます。
小売大手の差を生んだ「教育型カテゴリページ」
小売サイトの比較では、Ulta Beautyが約33万5,000件の引用を獲得し、Sephoraの約20万件を大きく上回りました。Morabito氏によれば、データ全体の31%の質問で、回答にUlta Beautyが登場していたといいます。
その要因として挙げられたのが、商品を並べるだけでなく、選び方や使い方の解説を組み合わせた「ハイブリッド型」のカテゴリページです。ECサイトでは、カテゴリページを商品一覧として作りがちですが、そこに「どんな悩みに、どれを、なぜ選ぶか」という説明を加えることが、AIからの引用につながっている可能性があります。
「専門家が推奨」と書くだけでは足りない
Morabito氏は、ページに「皮膚科医推奨」とだけ書いても意味がなく、実在する、特定できる専門家と主張を結びつける必要があると指摘しました。例として、皮膚科医の写真と、その人のコメントを掲載する方法を挙げています。
また、商品ページで評価されている例としてCeraVeが紹介されました。肌の悩みごとの詳しい説明、名前の分かる皮膚科医の推奨、第三者機関の認証を備えている点が評価されています。これは、GoogleがE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)と呼ぶ考え方とも重なります。根拠のない言葉ではなく、検証できる裏付けが、AI時代にはより重要になっていると言えます。
AIごとに「引用の好み」が違う
Morabito氏は、AIエンジンにはそれぞれ独自の「引用の傾向」があると説明しています。たとえばRedditは、GoogleのAI Overviewsでは引き続き存在感がある一方、ChatGPTの引用では大きく減っていたといいます。
つまり、「GEO対策」を1つの方法でまとめて考えるのは難しく、どのAIでどう見られているかを個別に確認する必要があります。以前、当サイトでもAIがブランドを「知っている」ことと「薦める」ことの違いを取り上げましたが、Morabito氏も、目標は「言及される」ことから「推奨される」ことへ移すことであり、回答の中で自社がどれだけの割合を占めるか、最初に名前が挙がるかを追うべきだと述べています。
動画は「すでに検索エンジン」
Stella Risingが美容関連の買い物客511人に行った調査では、10人中6人がTikTokで検索した経験があり、10人中4人は、Googleの代わりにTikTokで検索することがあると答えました。Morabito氏は、ソーシャル動画は検索エンジンに「なりつつある」のではなく、すでに検索エンジンだと表現しています。
成果の高いInstagramリール動画の分析では、92%が最初の一文で商品名を出し、72%がチュートリアル(使い方の実演)形式で、63%が冒頭で結果や手法の名前を示していたそうです。冒頭で「何の話か」をはっきりさせる点は、テキストのSEOで結論を先に書く考え方と共通しています。
それでも「1つ選ぶならSEO」
興味深いのは、どちらか一方を優先するならどうするかと聞かれたMorabito氏が、SEOを選んだことです。理由は、SEOのほうがより直接的で、効果を測りやすい集客経路だからです。同氏は、AIの回答内のリンクをクリックする人はとても少なく、その後の行動は他のチャネルで続くことが多いとも話しています。
また、「SEOは死んだ」「GEOだけに集中すべき」といった主張は、多くの場合、何かを売ろうとしている人によるものだとも述べ、ツールを買うだけで問題は解決しないと注意を促しています。SEOはAI検索時代の「参加費」になったという見方とも一致する考え方です。
実務で何をすべきか
今回のデータから、SEO担当者が取り組めることを整理します。
- カテゴリページに解説を加える:商品一覧だけでなく、悩み別の選び方・使い方・違いの説明を加え、「質問に答えるページ」にする。
- 主張に根拠をつける:「専門家推奨」「効果あり」と書く場合は、名前の分かる専門家、臨床データ、成分の説明、第三者認証などで裏付ける。
- メディア掲載を増やす:AIは編集コンテンツを多く引用しているため、第三者メディアでの紹介(アーンドメディア)も重要になる。
- AIごとに現状を測る:Google AI Overviews、ChatGPTなどで、主要な質問に対し自社が登場するか、何番目に名前が出るかを記録し、基準値を作る。
- 動画も検索対策として作る:冒頭で商品名や結論を示し、ユーザーが実際に使う言葉で悩みに答える。
- 従来のSEOは続ける:測定しやすい成果の土台として、技術面・コンテンツ面の基本は手を抜かない。
まとめ
大規模な調査から見えてきたのは、AIは「上位表示されているページ」よりも、「詳しく、信頼できる根拠をもって答えているページ」を選びやすいということです。一方で、AIからのクリックは少なく、測定しやすい成果を生むのは今もSEOです。新しい用語に振り回されず、SEOの土台を保ちながら、解説の充実、専門家による裏付け、AIごとの状況の確認を少しずつ進めていくのが現実的な方法と言えるでしょう。




